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生産者と消費者をつなぐ「バスの八百屋」

阪神間に5つの店舗を展開する「バスの八百屋」は、神姫バス株式会社の地域事業本部アグリ事業課が運営する兵庫県産の野菜や加工品の販売店。輸送手段として一部バスも活用しながら、県内各地の生産者と都市部の消費者をつなぐ独自の地産地消モデルを推進しています。

生産者を応援するとともに地域活性化を

西宮・苦楽園の住宅街の一角に今年10月、「バスの八百屋」の苦楽園口店がオープンしました。同社が社員による社内事業提案制度をきっかけに10年ほど前に立ち上げた事業の一つです。「兼業農家の社員が多く、耕作放棄地の増加をはじめとする地域課題の解決や農業振興につながればという思いでスタートしました」と話すのは、地域事業本部アグリ事業課長の井上啓明さん。立ち上げ当初から事業に携わってきた一人です。

まずは、2012(平成24)年、姫路市内の生産者に声をかけ、姫路駅前のバスターミナルに直売所を設けてバスに乗って商品を持って来てもらい、販売。ところが、手で運べる量には限りがあり、往復する時間を考えると生産者の採算が取れませんでした。

そこで同年、和歌山市にある農業ベンチャー「農業総合研究所」と提携し、新しい仕組みを検討。豊岡市から南あわじ市まで県内6カ所に集荷場を設けて生産者から農作物を集め、一括して委託契約したスーパーなどに運んで販売してもらったり、自分たちで移動販売車で住宅街を回ったりしました。

しかし、事業として収益を上げるのはなかなか厳しく、さらに自社独自で販売システムを作ることに。3年前、神戸市内に仕分け場所を設け、朝、各集荷場に集まった商品を神戸へ運んで仕分け、翌朝阪神間に設けた直営店「バスの八百屋」で販売する仕組みを構築しました。

店頭にはその日のおすすめ商品が並びます。一般のスーパーに比べ、どれもお手頃価格。
野菜と加工品が並ぶ店内。平日でも開店と同時に次々とお客が訪れます。

規格外の商品も販売し食品ロスを防ぐ

店舗は甲子園口店をはじめ、阪神甲子園店、武庫元町店、苦楽園口店、六甲道店の5カ所。農協の直売所や道の駅などがない場所を選んでいます。バスの八百屋統括担当の吉岡菜月さんは、「スーパーなど大規模小売店だと出荷から店頭に並ぶまでに2、3日かかるので、新鮮なのがうれしいというお声を頂きます」とにっこり。

契約する生産者は約1,000人、そのうち現在実働しているのは700人ほど。安全上問題がなければ多少形やサイズが規格外でも受け付けており、生産者からは「これまで出荷できなかったものも出せるので助かる」と好評だそう。廃棄する野菜が減ることで、食品ロス削減にもつながっています。

「規格外のものもあるので価格は抑えめ。多少形が悪くても味はいいのでお買い得ですよ」と胸を張る吉岡さん。

野菜の他に、地元でしか手に入らないお菓子や豆腐、味噌といった加工品なども扱っています。「現地の道の駅にあるようなものを近くで購入できると喜んでいただいています」と吉岡さん。

今日も県内各所から集められた新鮮な野菜や加工品を求めて、多くの人が訪れています。

店の壁には主な生産者の写真が張り出されています。
「今後はお客さまにとってより便利な店を目指していきたい」と話す井上さん(左)と吉岡さん。

一部の商品は、高速バスのトランクルームに入れて輸送されています。(写真提供:神姫バス株式会社)
バスの八百屋 苦楽園口店
西宮市石刎町8-11 コータース苦楽園
TEL:080-1496-0067
営業時間:10:00~18:00
定休日:年末年始
アクセス:阪急「苦楽園口」駅から徒歩約5分
マップ:https://maps.app.goo.gl/b6TfZTLC6i91FepC6
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