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鬼が神に代わって災いをはらう長田神社の「古式追儺式」

商工業をはじめとする産業の守護神、事代主神(ことしろぬしのかみ)を祭り、「長田さん」の愛称で親しまれる長田神社。毎年2月3日に行われる追儺式に出てくる鬼は悪者ではなく、神の化身として手にしたたいまつや太刀で全ての災いをはらい清めます。

鬼役など神事の主役は地元の氏子たち

追儺式の始まりは室町時代。鬼面や太刀などの製作年代や古文書から、650年ほど前には既に現在の形で行われていたと推察されています。当時のまま伝わる貴重な神事として、1970(昭和45)年に県重要無形民俗文化財に指定されました。

登場する7匹の鬼は昔の日本の家族形態を表しており、家長の餅割(もちわり)鬼、その妻の尻くじり鬼、子どもの一番太郎鬼、赤鬼、青鬼、乳母の姥(うば)鬼、下男の呆助(ほうすけ)鬼という構成。5人の太刀役、「肝煎り」と呼ばれる世話人を含め、務めるのは全て地元(旧長田村)に代々住む氏子たちです。

「最後に餅を割る餅割鬼は神事の主役で、他の6鬼を経験した人しかできません。だから少なくとも7回目の出演となります。太刀役は10歳前後の子が務めるので、子どもの頃から参加されてきた人が多いですね」と同神社の広報担当者。氏子で構成する長田神社追儺式奉賛会のメンバーを中心に、地域が一体となって伝統の神事を守り伝えているのです。

大役の餅割鬼を務める人は、全ての鬼を経験しています。
ほら貝を吹くのも氏子です。

たいまつの火と太刀で災いをはらい切る

2月3日の早朝、鬼役は須磨の海で身を清め、所作を練習してから神社へ。太刀役、肝煎りと一緒にご神火を授かり、鬼面など諸道具を受け取ります。

13時30分、太鼓やほら貝の音が鳴り響く中、拝殿前の舞台に一番太郎鬼が登場。いったん引っ込んだ後、それぞれにたいまつを手にした赤鬼、姥鬼、呆助鬼、青鬼、一番太郎鬼が順に現れ、そろって演舞します。さらに、右手にたいまつ、左手におのを持った餅割鬼と、腰につち、右手にたいまつ、左手に大矛(おおほこ)の尻くじり鬼も続きます。舞台を激しく踏み鳴らし、舞い踊りながら、たいまつの炎でさまざまな災いを焼き尽くす鬼たち。時にぴたりと止まったり、蹲踞(そんきょ)の姿勢でしゃがみ込んだりと、どこかユーモラスな所作は神楽や狂言などの古典芸能を思わせます。

次は太刀渡しの儀式。鬼たちは太刀役から太刀を受け取り、右手にたいまつ、左肩に太刀をかつぎ舞い踊ります。「太刀の刃で凶事を切り捨てるのです」

当日の朝、須磨海岸でみそぎと所作の練習をします。
人々のために尽くす鬼の顔はどこか優しく見えます。
凶事を切り捨てるために太刀役から太刀を受け取ります。

なかなか割れない餅に鬼が四苦八苦

最後に、最も重要な餅割神事が餅割鬼と尻くじり鬼によって行われます。拝殿につるされた太陽と月、天地を表す「泰平の餅」と日本の国々を示す「六十四州の餅」、12カ月を表現した「影の餅」をおのとつちで割り、家内安全や厄よけを願います。「影の餅はつちでもなかなか割れなくて、何度も所作を繰り返します」。最終的におのにより「影の餅」が割れて、神事は終了です。

「節分といえば豆まきが一般的ですが、当神社の追儺式は鬼が悪者ではないので行いません。参拝客はたいまつの灰をかぶることで厄よけになるとされています」と広報担当者。たいまつの燃え残りを家の入り口につるして護符とし、ヤナギの枝に餅を巻き付けた餅花の餅を食べて無病息災を祈るのが昔からの風習だそうです。

当日は、たいまつをはじめ、鬼面が描かれた絵馬や厄よけ餅が販売され、厄よけ餅が入った「厄除けうどん」の出店も。神事の合間に縁起物を頂くのも楽しそうです。

神の化身だと考えると、怖い鬼面も神聖なものに見えてきます。今年の節分は、人々のために災いをはらってくれる良い鬼に会いに行きませんか。

最大の難関である「影の餅」を餅割鬼がおので割ります。後方はつちと太刀を持った尻くじり鬼。
7匹の鬼の「古式追儺式神事絵馬」(各500円)。どの鬼も憎めない表情をしています。
長田神社古式追儺式
日時:2月3日(土)13:30~18:00ごろ(追儺神事)
場所:長田神社境内
長田神社
神戸市長田区長田町3-1-1
TEL:078-691-0333
アクセス:阪神「高速長田」駅または地下鉄「長田」駅から徒歩約5分
HP:https://nagatajinja.jp/
マップ:https://maps.app.goo.gl/mSvjdEnNM1CsFJob9
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