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進化を続ける日本一の酒どころ

江戸時代、伊丹や西宮、神戸東部の酒造家たちは、「下り酒」と呼ばれる上質の酒を江戸に届けて清酒のスタンダードを築きました。そのストーリーは「『伊丹諸白』と『灘の生一本』下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷」として文化庁の日本遺産にも認定されています。伝統と革新の清酒造りが続く酒どころの今を紹介します。

灘五郷のサステナブルな日本酒造り

灘五郷を代表する銘柄「福寿」の醸造元、株式会社神戸酒心館は昨年10月20日、製造工程における二酸化炭素排出量が実質ゼロ(カーボンゼロ)となる日本酒、「福寿 純米酒 エコゼロ」を世界で初めて発売しました。「エコゼロ」の醸造では、再生可能エネルギー由来の二酸化炭素を出さない電気を使用。さらにガスも、生産から燃焼までの二酸化炭素排出量を実質ゼロにしたカーボンニュートラルな都市ガスに転換しました。また、米の磨きを抑えることで精米工程のエネルギーを削減。精米歩合80%の米を低温でゆっくりと発酵させ、米が持つ大地の豊かな味わいを引き出しながらも、後味の爽やかさを実現しています。

「日本酒の原料である酒米や水を安定的に調達するためには、温暖化や気候変動などの環境問題は大変なリスク。環境負荷をかけずにおいしい酒をつくることが日本酒の持続的生産につながります」と、代表取締役社長の安福武之助さんはサステナブルな酒造りの意義を話します。同社のカーボンゼロの取り組みは飲料業界の世界的な環境アワード「THE DRINKS BUSINESS GREEN AWARDS 2022」を、日本の酒造メーカーで唯一受賞。グローバルな市場における日本酒の存在感を高めることにも寄与しています。

瓶に直接印刷を施してラベルレス化を実現。「エコゼロ」はオンラインショップ(https://shushinkan.net)で購入できます。
株式会社神戸酒心館
TEL:078-841-1121

サステナブルな酒造りは沢の鶴株式会社でも進んでいます。2016(平成28)年から産業機械メーカーのヤンマーとタッグを組んで、新しい酒米を作るプロジェクトに挑戦。その背景には「日本の米作り、日本の農業を持続可能なものに変えたい」という両社の熱い志がありました。このたび、目標だった「山田錦」と双璧を成し得る酒米「OR2271」の栽培に成功。その酒米で仕込んだ日本酒が、昨年10月1日に発売された「NADA88」です。

「OR2271は山田錦に比べて草丈が短く、倒れにくいため栽培しやすいという特長があります。また、心白が大きくタンパク質と脂肪が少ないので雑味が出にくく、酒造りに適しています」と、同社マーケティング室室長の郷田琢磨さん。「NADA88」の88は米という字を分解すると八十八になることから。同社の米へのこだわりを表しています。ナシのような果実香と米の甘みを感じることができる「NADA88」。近未来的なルックスも魅力的な、新たな日本酒の誕生です。

斬新なパッケージはヤンマーのデザイン室が担当。「NADA88」はオンラインショップ(https://www.sawanotsuru.co.jp/store/)で購入できます。
沢の鶴株式会社
TEL:078-881-1234

灘五郷26蔵の酒を飲み比べ

阪神「御影」駅から南へ歩いて約10分。剣菱酒造株式会社の本社の隣に「灘五郷酒所」はあります。その名の通り、灘五郷の日本酒の魅力を発信する場所として昨年4月にオープンしました。剣菱の酒蔵だった建物を改装した店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが世界最大級という全長50mのカウンター。奥にはかつての醸造タンクも見えます。「カウンターは醸造タンクに向かう参道。八百万(やおよろず)の神が集う酒神社をイメージしています」と代表の坂野雅さんが教えてくれました。

基本はスタンディング。椅子付きのプランもあります(要予約)。

メニューは灘五郷26蔵の日本酒と、地元の旬の食材を使った日本酒と相性抜群の料理。人気の「灘五郷酒所セット」は、灘五郷の各郷(西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷)のおすすめの日本酒5種とそれに合う料理3種のセット。口にする順番などペアリングの楽しみ方を示した紙も付いており、日本酒初心者にぴったりです。

「とにかく灘の日本酒を楽しんでもらいたい」と坂野さん。自らマイクパフォーマンスで来店者を盛り上げることもあるそうです。日本一の酒どころに生まれた新スポットで、灘の酒をとことん楽しんでみませんか。

15枚3,000円のチケット制で「灘五郷酒所セット」はチケット12枚分。日本酒の銘柄と料理は季節によって変わります。
灘五郷酒所
神戸市東灘区御影本町3-11-2
TEL:080-7495-8291
営業時間:12:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:月曜~木曜
席数:カウンター26席
アクセス:阪神「御影」駅から徒歩約10分

清酒発祥のまち恒例のイベントが復活

伊丹は、濁りのない「澄み酒」を生み出したと伝わる清酒発祥の地。JR「伊丹」駅と阪急「伊丹」駅を結ぶ通りはかつての酒蔵などが残り、「伊丹酒蔵通り」と呼ばれています。毎年2月の第2日曜日には、小西酒造株式会社が主催する「白雪蔵まつり」で大きなにぎわいを見せます。「コロナ禍でここ数年は開催を見送りましたが、今年は3年ぶりにリアル開催します」と同社マーケティング部の滝本昌美さん。「阪神・淡路大震災で被災したまちを元気づけようと始まった復興イベント。久しぶりのリアル開催で地域に元気を与えることができればうれしいですね」と笑顔で話します。

鏡開きの様子(コロナ禍前の開催時)。

鏡開きや振る舞い酒、地元の名士を招いての特別講演会など、日本酒に親しむ企画が多数用意されており、普段は見ることのできない小西酒造の工場内部のリモート中継も行われます。主会場となっている「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」には、昔の酒造り道具が展示されたミュージアムがあり無料で公開されているほか、少し足を延ばせば、昨年4月にリニューアルした歴史、文化、芸術の総合的な発信拠点「伊丹市立ミュージアム」も。伊丹の酒造りを今に伝える遺構「旧岡田家住宅」「旧石橋家住宅」も含まれる新しい施設で、日本酒に関する造詣を深めてみるのも一興です。

かつての酒蔵を活用した「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」。
第26回白雪蔵まつり
日時:2月12日(日)10:00~16:00
会場:白雪ブルワリービレッジ長寿蔵および近隣
内容:鏡開き・振る舞い酒、特別講演会、蔵見学(リモート)、お楽しみ袋販売など
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