フードロス削減に向けた訳ありスイーツ
日々の製造現場で出てくる、ケーキの切れ端や形が崩れた饅頭など。見栄えは少し悪くても味は正規品と何ら変わりません。フードロス削減のため、それらをお手頃に販売する洋・和菓子店を紹介します。
ケーキの切れ端などをお手頃価格で
尼崎市を拠点とする「ケーキハウス ショウタニ」。2004(平成16)年に開店した「庄谷倶楽部」では、5年ほど前からケーキやムースなどを作った際に生じる切れ端を透明の容器に詰め込んだ「はしっこ弁当」(400円~)を販売しています。「社会でフードロス削減に向けた取り組みが進む中、それまでおやつとしてスタッフたちが食べていた“はしっこ”を商品としてお出ししてもお客さまは喜んで受け入れてくださるのではと考えたのがきっかけです」とパティシエールの上野香織さんは話します。
また、シュークリーム用のシュー皮も見た目の悪いものは細かくカットしてケーキの側面をコーティングするのに用いてきましたが、今年から、焼き直してシュガーをまぶし、「シューラスク」(180円)にして店頭に並べています。
この他、形が悪いフルーツはケーキの間など見えない部分に挟んだり、ジャムに加工して別の商品に活用したりしているそうです。「食べられるものはできるだけ無駄にしないよう心がけています。当店のお菓子作りの裏側には、そのような思いがあることを知っていただけたらうれしいです」と上野さん。
「はしっこ弁当」は、スポンジ生地に生クリームとフルーツをのせた「フルーツ」をはじめ多い時には4~5種ある日も。朝のうちに売り切れることが多いので、開店めがけて訪れるのが良さそうです。
尼崎市西難波町4-1-1
TEL: 06-6487-5488
営業時間:10:00~19:00
定休日:なし
アクセス:阪神バス「西難波南」バス停から徒歩すぐ
マップ:https://maps.app.goo.gl/Fe7xiuhpLfCZxRAN6
お菓子の切れ端などをひと手間かけて商品に昇華
1997(平成9)年、神戸市須磨区にオープンした「レーブドゥシェフ 名谷本店」では、お菓子の製造過程で出る余りものや不完全なものを用いた“リメイクスイーツ”が人気です。
ショートケーキの切れ端を集めて上品な甘さの生クリームで覆いデコレーションした「職人のおやつ KIREHASHI」(550円)と、シュー皮にヘーゼルナッツ入りのキャラメルクリームをかけた「職人のおやつ シューラスク」(600円)があり、いずれも“半端もの”から生まれたとは思えないほどの仕上がりです。「商品名の通り、もともとは職人が休憩中に食べていたのですが、余ってしまうのでひと手間かけて別の商品として出すようになりました」とシェフの片山陽介さんは話します。
シューラスクは16年前から、KIREHASHIは昨年から販売。「洋菓子の本場フランスでは、売れ残ったパンやお菓子をラスクなどにすることは古くから日常的に行われてきました。日本でも昔は当たり前だった“もったいない”という感覚が、近年、SDGsの広がりでようやく見直されつつあります。私たちもお菓子を通してそれを伝えていきたいと思います」
かつての職人たちのおやつは、今では大切なメッセージと共に、多くの人のお腹と心を満たしてくれます。
神戸市垂水区名谷町321-1
TEL:078-708-5333
営業時間:10:00~18:00
定休日:なし
アクセス:山陽バス「東名谷」バス停から徒歩すぐ
マップ:https://maps.app.goo.gl/szkWtAhJnS3diZZCA
B級品や期限切れ間近の商品を自動販売機で
“SDGsなお菓子”は老舗和菓子店にもあります。1887(明治20)年、大阪市内で創業した「髙山堂」では、2022(令和4)年から西宮本店、武庫之荘店、箕面店の店先に自動販売機を設置し、正規品とともにB級品や賞味期限間近の商品を販売しています。
「コロナ禍で対面販売による感染リスク抑制や残業削減につなげる働き方改革に加え、フードロスを減らすために始めました」と話すのは、5代目当主の竹本洋平さん。それまで西宮市内にある工場では規格外の商品は従業員向けに社内販売していたもののさばき切れないこともあったそう。また、卸し先から売れ残って返品されてきた賞味期限間近のものはそのまま廃棄していたので、この取り組みにより廃棄率が随分下がったといいます。
自動販売機は9つある商品ボックスの一つが「和菓子ガチャ」となっており、ボタンを押すと、代表銘菓の洋風まんじゅう「スウィートまーめいど」をはじめとする7~8種のうち、ランダムな組み合わせで3個入った袋が出てきます。通常450円~600円相当が一律300円。「昔なら正規品を買っていただくお客さまの手前、値引きしにくかったのですが、SDGsの意識が社会に浸透してきたことで可能になりました。今後は廃棄ゼロを目指していくつもりです」と竹本さん。
「何が出るか」わくわく感が楽しめ、お得感にも満たされる、魅惑の自動販売機です。
西宮市門前町1-14
TEL:0798-67-7918
営業時間:9:30~18:00
定休日:火曜
アクセス:阪急「門戸厄神」駅から徒歩約15分
マップ:https://maps.app.goo.gl/3DkAz7CvHpLmNbCJ7