増改築を経て地域で親しまれてきた「旧船坂小学校」

西宮市北部、有馬温泉へと続く湯の山街道沿いに広がる船坂地区には、大正・昭和期の木造建築物を改修・増築した「旧船坂小学校」が残っています。1873(明治6)年、近くの善照寺を間借りして開校したのが始まりで、2010(平成22)年の閉校後は地域の魅力発信拠点「船坂里山学校」として、住民たちの手で大切に守られています。

周囲の自然と融和した学び舎  

一年を通し、豊かな里山の自然を生かした体験イベントや地元の農産物を取り入れたランチが楽しめ、校舎の見学もできる「船坂里山学校」。グラウンド横の「ランチルーム棟」と、その裏手の高台に立つ校舎の2棟が旧船坂小学校の建物です。

1900(明治33)年に建てられた木造平屋建てから増築、改装を重ねたランチルーム棟は、赤い三角屋根とダークブラウンの焼き板が目を引きます。「現在は食事やそば打ち体験などを行う部屋として使われていますが、私が通っていた50年ほど前は講堂でした」と地元住民らで結成された船坂小学校跡施設管理運営委員会の委員長、梅原浩之さんは振り返ります。

ランチルーム棟の裏から延びるスロープを上ると、校舎が見えてきます。東側は木造平屋、西側は半分が木造2階建て、もう半分が鉄筋2階建てになっています。1955(昭和31)年の建築時は木造の1階部分しかありませんでしたが、1960年に西側に2階部分が、1981年には鉄筋部が増築され、時代とともに進化してきました。「廊下を歩くと木造部分だけミシミシと木がきしむ音が響きます。木造部と鉄筋部の境目もはっきり分かります」

東側の平屋部分の教室を出ると、季節や天候の変化を肌で感じられます。現在は木が成長して視界をさえぎりますが、かつては向かいの山の斜面に点在する段々畑と民家が一望できたといいます。「畑仕事をしている親をよく探したものです。校歌の歌詞にもそういう情景が盛り込まれているんですよ」と梅原さんは懐かしみます。

左の三角屋根がランチルーム棟、右の山の斜面の樹木の間に見えるのが校舎。
グラウンドから緑の樹々に迎えられスロープを上ると、校舎の入り口が見えてきます。
山に囲まれ木材が豊富な同地区。校舎には地元の木材が使われ、教室内も板張りです。
緑があふれ自然がすぐそばに感じられる東側1階のテラス部分。

地元の素材をふんだんに取り入れたそばランチ

同施設では、理科室を改装して地域の歴史に関する史料の展示室にしたり、プールに多彩な水生植物を植えメダカなどを入れてビオトープにしたり。校舎の前の畑での芋掘りや、地元で育てたそばを使ったそば打ち、味噌作りといった体験イベントも行われています。「市街地で暮らす親子を中心に自然に親しめる場所として好評です」と話す梅原さん。

ランチルーム棟では、毎月第3日曜に40食限定で船坂で栽培したそばと農産物を使った「そばランチ」(1,000円)を提供。標高400mに位置する船坂地区では、米や野菜に加え、ソバの栽培も行われています。「収穫した実を製粉し、船坂地区内で飼っている鶏卵入りの水でまとめ、打っています。野菜の天ぷらなどのおかずと味噌汁、ご飯、漬け物が付き、地元の季節の食材を堪能できます」と梅原さん。

地域の歴史と住民たちの記憶が刻まれた学び舎は、自然の恵みに触れられる場所として新たな役割を担い、歩みを続けています。

地域の史料が並ぶ「舟坂展示室」。かつて集落名は「船坂」ではなく「舟坂」だったそう。
地元の新鮮な農作物をふんだんに取り入れたヘルシーな「そばランチ」(予約不可)。
船坂里山学校(旧西宮市立船坂小学校)
西宮市山口町船坂2048-2
TEL:078-904-1971
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜(祝休日の場合は翌平日)
入館料:無料
Instagram:https://www.instagram.com/funasakasatoyama/
アクセス:さくらやまなみバス「舟坂橋」下車徒歩約10分
マップ:https://maps.app.goo.gl/Jv9tkV2Gi5xuJNiz9
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