インド刺しゅうが施された華麗なお守り（南宮宇佐八幡神社）

阪神「岩屋」駅から南へ10分ほど歩いた所に南宮宇佐八幡神社はあります。創建は1336（建武３）年、ご祭神は応神天皇。楠木正成が出陣の途中で休息した地に村人たちが勧請したと伝わる、地区の氏神様です。宮司が常駐していないため、普段授与所は閉まっており、開くのは毎月1日だけ。「ついたちまいり」として神前にお供えした塩を配布するほか、ご朱印やお守りも用意しています。

授与所に入るとまず目に留まるのが、壁面にずらりと並ぶきらびやかなお守り。身を守ってくれる肌守りで、その名も「華守」（1,000円）です。「参拝の皆さんが、それを目当てに来るような授与品をつくろうと考案しました。インドの伝統衣装サリーに使われる、刺しゅうが施されたリボンを使っています」と話すのは宮司の妻、森本藍子さん。ハンドメイドのイベント会場で見かけたリボンに一目ぼれし、最初は自らミシンで500個ほど手作り。2016（平成28）年に授与を始めました。

花や鳥などが刺しゅうされた色とりどりの華守はSNSで評判となり、多くの人が訪れるように。今では40種以上の柄をそろえています。「同じリボンを使っても、裁断する部分によって出来上がりの雰囲気が変わります。持ち歩くものだからこそ、一番好きな柄を選んでいただきたいですね」と森本さん。迷った末に結局は選び切れず、「友人や家族にも」と複数受けて帰る人もいるそうです。迷うのも楽しい華守選び。氏神様も、ほほ笑ましく見守ってくださることでしょう。

拝殿の天井やご朱印に咲く万葉の花々（水堂須佐男神社）

尼崎市にある水堂須佐男神社は、５世紀ごろ築造された水堂古墳上に立つ珍しい神社です。ご祭神は素戔嗚尊（すさのおのみこと）。創建は1575（天正３）年と伝わりますが、実際はそれよりずっと前から地域の氏神様として祭られてきたと推察されています。

同神社のシンボルは拝殿の天井画「万葉の花」。阪神・淡路大震災で被災した本殿や拝殿を再建した2000（平成12）年、日本画家の鈴木靖将さんにより奉納されました。銅鏡や刀剣といった古墳の副葬品や万葉集の歌に詠まれた草花が、色鮮やかなブルーとグリーンの背景に生き生きと描かれています。「古墳の被葬者と震災の犠牲者の霊にささげる意を込めて描かれたものです」と、宮司の上村秀嗣さんは話します。

天井画をモチーフとしたお守りや絵馬、ご朱印帳のほか、四季折々に「万葉歌御朱印」（2,000円）も授与しています。「万葉集から季節に合った歌を選び、絵と共に書き入れています」と上村さん。優しい筆致の水彩画と万葉歌を組み合わせたご朱印は、手作りのぬくもりが伝わると人気を集めています。

最近は、境内に咲く花々で飾った手水舎（ちょうずや）をカラフルな和傘でデコレーション。「万葉歌御朱印」の作成を含め、上村さん自ら行っているそうです。「当神社の参拝者は7割ほどがリピーター。いつ来られても飽きないように、これからも工夫していきたい」と笑顔を見せます。季節ごとに異なる表情を見せる“古墳と万葉の花の宮”。何度でも訪れたくなる魅力にあふれています。