通勤電車として活躍するJR和田岬線
JR「兵庫」駅と「和田岬」駅を結ぶ和田岬線。その間に駅はなく、全長2.7km、片道わずか4分の道のりです。通勤電車として朝夕のみ60年以上運行を続ける支線を紹介します。
通勤需要に応え続ける路線
和田岬線は、兵庫港に陸揚げされた輸入資材を輸送するために、「兵庫」駅と「和田崎町」駅間に敷設され、1890(明治23)年に貨物専用線として開業しました。当時、和田岬には工場が多く通勤需要があったことから、程なく旅客にも対応するように。約60年前には現在と同様、朝夕のみに運行していた記録が残っています。「和田岬」駅に改称したり、間にできた駅が廃止になったりと紆余曲折を経て1980(昭和55)年、貨物営業が終了しました。
鉄道ファンになじみ深いのは、和田岬線が電化された2001(平成13)年に運行を始めた、車体がスカイブルーの103系です。しかし、日本国有鉄道時代に製造された車両は老朽化に伴い2023(令和5)年3月に惜しまれながら引退。現在は一般的な207系が走っています。
「兵庫」駅で、和田岬線の乗り換え口へ。改札を通り階段を上がると、ホームにはすでに車両が停車しており、通勤客でひしめく車内に乗り込みます。発車して間もなく大きく左に曲がり、工場や住宅の間を真っすぐ走り抜けた先には兵庫運河が見えてきます。
103系の頃から、多くの鉄道ファンがカメラを向けるのが、運河に架かる和田旋回橋を渡る雄姿。和田旋回橋は1899(明治32)年に竣工した日本で最初の鉄道可動橋です。橋の両端にはれんが造りの橋台が設置され、中央部分の橋脚に英国から輸入した回転桁が取り付けられました。船が運河を航行する時には、橋桁を反時計回りに90度旋回させることで航路を確保していましたが、昭和初期、船舶の大型化により運河を通行する船がなくなったことから回転装置を取り外し、固定されました。今では稼働する姿は見られないものの、歴史的価値が評価され、2021(令和3)年に土木学会選奨土木遺産に認定されました。
ビンテージ家具の使い心地を体験できるカフェ
出勤する乗客と共に電車に揺られ、「和田岬」駅に到着。ホームを足早に去る人々を見送り、通勤の波とは反対の西方向へ。御崎公園や住宅地を通り抜けると、兵庫運河に出ます。運河に沿って「浜山プロムナード」と呼ばれる遊歩道が整備されており、水面を眺めながら散策を楽しめます。
11時になると、和田旋回橋の近く、兵庫運河沿いにあるビンテージ家具店「北の椅子と」が開店します。1960年代に製作された家具を扱う店は、製材所の機能を一部残しつつ改装した建物で11年前にオープンしました。デンマークの家具に出迎えられ2階に上がると、扉の向こうにカフェスペースが広がります。床は製材所だった頃のままで、壁は明るめのトーンの杉板を採用。テーブルと椅子はビンテージ家具で統一し、気に入ったものがあれば、似たような品を購入することも可能です。「ビンテージ家具の使い心地を体験し、気に入ってもらえればうれしいです」と店主の服部真貴さんは話します。
カフェには2種のランチメニューがあり、日替わりの「プレートランチセット」が人気です。神戸市北区と西区の農家から仕入れる有機野菜を使用したメイン料理、副菜、ミニスープがワンプレートに。主食は白米、玄米、「MAISON MURATA」のパンから選べ、ドリンクも付いています。服部さんのイチオシは自家製のミントで作る「ミントティー」。すっきりと爽快な後味が魅力で、「夏は冷たい飲み物が欲しくなりますが、空調が効いた部屋で、暖かい飲み物を飲みながらゆっくり過ごしてください」 と服部さん。
ランチを食べて、家具を見て、またお茶を飲みながら休憩と、居心地の良さから長時間滞在する人も多いそう。奥深いビンテージ家具の世界をのぞいてみませんか。
神戸市兵庫区材木町1-3
TEL:078-203-4251
営業時間:11:00~17:00(L.O.16:00)〔日曜、祝休日は11:00~18:00(L.O.16:00)〕
定休日:水曜、土曜
席数:テーブル40席
アクセス:地下鉄「和田岬」駅または「御崎公園」駅から徒歩約10分
HP:https://kitanoisu-to.com/
マップ:https://maps.app.goo.gl/oUd4JUSSEKDpyu9M8