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さまざまな被災地支援の形

災害が起こると、各地で募金をはじめ多様な被災地支援活動が行われます。阪神・淡路大震災を経験した神戸で続けられている、特徴的な2つの取り組みを紹介します。

祈りを込めた写経を通して被災地を支援(須磨寺)

神戸・須磨、源平合戦で知られる一ノ谷の近くに886年に開かれた須磨寺。ここでは写経を通じた被災地への募金活動が行われています。その名も「祈りの写経プロジェクト」。そもそもは新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言が出された2020(令和2)年春、外出できず精神的にふさぎ込む人々に向けて寺務長の小池陽人さんが提案したものでした。寺のホームページに写経用紙を公開し、それをダウンロードして文字をなぞったり、手本にして書いたりしたものを寺に郵送または持参して納めれば、毎朝勤行で供養され、定期的におたき上げが行われるという仕組みです。「ユーチューブチャンネルで紹介したところ、全国から次々と写経が届きました」と小池さんは話します。
程なく、熊本県で豪雨災害が発生。同寺も阪神・淡路大震災での被災経験があることから、写経の取り組みを被災地支援につなげられないかと思いを巡らせていたところ、知り合いの長野県の僧侶が東日本大震災以降、「日本笑顔プロジェクト」と題した災害支援活動を展開していることを知ります。そこで、写経の奉納料1,000円を全額復興支援金としてそこに託し、写経の奉納者には祈りの写経プロジェクトオリジナルの御朱印とポストカードを授与することにしました。
活動の輪を広げるため、阪神・淡路大震災で被害を受けた神戸市内の3つの寺院にも協力を依頼し、現在は4寺合同で実施しています。これまでに全国から寄せられた写経は約2万巻。約250万円の支援金を「日本笑顔プロジェクト」に送りました。今年1月に発生した能登半島地震以降、再び全国から多くの写経が届くようになったそうです。「現地にボランティアに行けなくても、被災地に少しでも安寧が訪れるよう祈りを込めて写経することが助けになります。ぜひご参加いただければ」と小池さん。
震災を経験したまちから被災地へ。各地から届いた写経に込められた思いは、今日も厳かに読み上げられるお経と共に、復興を目指す地域へと送られています。

納められた写経と授与品の金文字のご朱印(手前)と「笑顔」と書かれたポストカード。
「筆がなければ鉛筆でも構いません。気持ちを込めて書いていただければ十分です」と話す小池さん。
須磨寺
神戸市須磨区須磨寺町4-6-8
TEL:078-691-0333
アクセス:山陽「須磨寺」駅から徒歩約10分
HP:https://www.sumadera.or.jp/oshirase/202007fukkousien.html
マップ:https://maps.app.goo.gl/d1ATcp4qPXTvkrCMA

ハートのパンで被災地にエールを(サ・マーシュ)

2011(平成23)年の東日本大震災をきっかけに生まれたパン屋さん発の復興支援のプロジェクト「ハートブレッドプロジェクト」。神戸・北野にある「サ・マーシュ」のオーナーシェフ西川功晃さんが「被災地のために皆で何かできることはないだろうか」と親しいパン職人に声をかけ、毎日の作業で余った生地を使ってハート形のパンを作り、その売り上げの一部を募金する取り組みを始めたのがスタートです。

立ち上げに携わったのは、大阪府内にある「フルニエ」「ア・ビアント」「パンデュース」、和歌山県にある「ナギ」のシェフたち。一過性のものではなく将来にわたって継続できるよう、5人のシェフが理事となりNPOを設立しました。趣旨に賛同するパン屋が加盟し、それぞれ独自でハート形のパンを製造して無理のない範囲で売り上げの一部をNPOに募金。集まったお金は災害が起こる都度理事で協議して支援先を選び、送金しています。材料や人件費の高騰でパン一個のもうけがわずかな時世、「経営的に厳しければ、できる時だけの参加でも構わない。阪神・淡路大震災を通して長く支援する大切さを感じたので、無理なく続けられる形にしました」と西川さんは話します。

パンのイベントや講習会を通してプロジェクトへの参加を呼びかけ、現在、県内の10店舗を含め全国で約70店舗が加盟するほか、パン教室の主宰者がハート形のパンのレッスンを開いて受講料の一部を募金するケースもあるそうです。さらに、取引先の企業から活動資金の協賛を得たり、個人客に結婚式の引き出物に使ってもらったりと、支援の輪は少しずつ広がりつつあります。

これまで集まった募金は、約1,600万円。東日本大震災をはじめ国内の被災地はもちろん、海外ではトルコ地震の支援金にも充てられました。本年度分はもちろん、能登半島地震の支援金に。「全国には何万とパン屋さんがあります。それら1軒ずつが1日10円でもいい、ささやかな気持ちを集めれば大きな力になると思います。この取り組みが日本中にもっと広がってほしいです」と西川さん。

甘いパンからハード系まで。一店ずつ個性の異なる多様なハートのパンに、作る人、食べる人それぞれが復興への願いを込め、支援は末永く続きます。

手前はソフトフランスパンでチーズを包んだ「ハートのチーズパン(小)」(132円)。奥の「ハートのチーズパン(大)」(275円)は、大豆バターを練り込んだソフトフランスパンに、オリーブオイルとパルメザンチーズを振りかけています。
同店では毎日数個、ハート形のパンを販売しています。

サ・マーシュ
神戸市中央区山本通3-1-3
TEL:078-763-1111
営業時間:10:00~18:00
定休日:月曜~水曜
アクセス:各線「三ノ宮」「三宮」「神戸三宮」から徒歩約15分
NPO法人ハートブレッドプロジェクトHP:https://heartbread.net/
マップ:https://maps.app.goo.gl/evANi6RZNu7FLgWL7
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