合わせる料理や飲む場面を考えて醸造したビールを

トアロードから1本東の筋、ヨーロピアンテイストの外観がおしゃれなビルの２階に「STARBOARD」はあります。オーナーの四宮由華さんは、神戸のクラフトビールの先駆け的な存在である「六甲ビール醸造所」の創業者を父に持ち、30歳で同醸造所の直営店「六甲ビールダイナー」の店長に就任。そのうち、「もっと神戸色を出したい、神戸産の野菜や果実を副原料にしたビールを造りたい」と思うようになり、醸造免許を取得。オリジナルの「神戸ビール」の醸造を始めました。

2012（平成24）年に分社独立し、「STARBOARD」を開店。現在は、店に程近い諏訪山醸造所で造った神戸ビールをはじめ、六甲ビール、ベルギーなど海外のビールを合わせて15種をそろえています。神戸ビールは四季折々に3～4種類がラインアップ。毎日１種は入れ替わるため、一期一会の出会いを楽しむことができます。

四宮さんのこだわりは、テーマに合わせたビール造り。「例えば、神戸のおいしいパンに合わせるものや、六甲山に登った帰りに喉を潤すものなど。あくまでも神戸を意識した製品にしたい」と目を輝かせます。四宮さんのビールを飲めば、神戸がもっと好きになりそうです。

昨年誕生したクラフトビールを存分に

2022（令和４）年4月に醸造を開始した「open air湊山醸造所」。小学校の跡地を活用した地域活性化のための複合施設「NATURE STUDIO」内に設けられた醸造所です。米国出身の醸造家がヘッドブルワーとして参加し、六甲山から流れ込む地下水を使用したビール造りが行われています。

同醸造所のビールをいち早く楽しむことができるタップルームが「open air神戸元町店」。醸造所に続いて昨年5月にオープンしました。ビールは基本12種がスタンバイ。一年を通して提供するスタンダード、季節感あふれる期間限定のシーズナル、挑戦的な醸造を行ったリミテッドに分かれています。「毎週火曜に新作ビールが登場します。また、月に一度、醸造スタッフもお店に来て、お客さまの声を聞いています」と話すのは店長の栗田剛志さんです。

スタンダードは、4種のホップを使った爽やかな「open air ipa」、複雑な香りを持つTalusというホップのみを使用した「new tune」、モルトの深い味わいを感じるラガータイプの「minatoyama lager」。いずれも、自信を持っておすすめする定番です。「湊山の醸造所は見学もできるので、見学後に来る方も多いですよ」と栗田さん。かつての小学校をリノベーションした醸造所からタップルームへ。大人の遠足には最適なコースといえるかもしれません。

地域に密着したビールを静かな空間で

六甲アイランドの一角にひっそりとたたずむ「IN THA DOOR BREWING」は、オーナーの中戸正親さんが醸造するクラフトビールのタップルームです。

中戸さんは2015（平成27）年に醸造免許を取得。「神戸でしか造れないビールを神戸で造る」をコンセプトに、地域密着型のビール造りを続けています。水は100％「神戸ウォーター 六甲布引の水」を使用し、ホップは神戸の生産者の力を借りながら自社で栽培。「ホップ栽培は現在6年目。全量を神戸産にするにはまだまだですが、少しずつでも増やしていけたらと思います」と話すのは共同経営者の中村美夏さん。季節ごとの限定ビールに使うブドウやイチゴ、ユズなどの果物も、神戸産にこだわっているそうです。

通年あるレギュラーは、イギリスのペールエールをモデルにした「Funk Ale」、淡路島なるとオレンジの皮を使用した白ビール「Shiroinon」、モルトの風味とホップの苦みのバランスが取れた「THA☆ALE」、5種のモルトを使用した黒ビール「黒汁」、爽やかな香りが特徴の「Session IPA」の５種。加えて折々の限定ビールがスタンバイしています。

現在は中突堤にある醸造所も、8月には店の近くに移す予定だとか。「大好きな街で造ったビールを静かな空間でゆっくり楽しんでほしい」と中村さんは話しています。