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焼きだけにこだわり伝統の「焼とうし」を未来へ

神戸市兵庫区の幹線、国道2号から西国街道を南へ入ってすぐ、マンションや住宅が混在するエリアにひっそりと立つ一戸建て。「兵庫名代 かいや焼とうし蒲鉾」と書かれた看板があるだけの、注意していないと見過ごしてしまいそうなたたずまいの店こそ、創業から間もなく200年という老舗のかまぼこ店「かいや」です。代々の主人が、初代貝住彌兵衛の名を継いで、屋号を守ってきました。

商品は「焼とうし蒲鉾」ただ一つ

「かいや」のただ一つの商品、「焼とうし蒲鉾」作りは朝、神戸市中央卸売市場から届くハモを丹念に洗うことから始まります。内臓を抜き、井戸水で洗い、水分を丁寧に拭き取ってから包丁で開いて下ごしらえ。ハモ専用のローラーで小骨と皮を取り除いた身をミンチにかけ、すり鉢に移します。加えるのは砂糖、塩、本みりんと少々の卵白だけ。正真正銘のハモ100%です。「使うのは国産のハモのみ。瀬戸内を中心とした近海ものです」と話すのは6代目の貝住彌兵衛さん。ハモが市場に揚がらなければ休業するという徹底ぶりに驚かされます。

石のすり鉢でハモのミンチと調味料、卵白を合わせ、すり身を作ります(写真は7代目の一弥さん)。

30分から40分かけて練り上げたすり身を一枚一枚、手作業で杉板に付けていきます。へら状の専用包丁を右手に、杉板を左手に持ち、すり身を包丁に少しずつ取り、空気が入らないよう注意しながら何度も重ね、最後に特有の角形に成形して完了です。「板付けは10年の年季が必要な難しい作業です」と6代目。この日、板付けを担当していた7代目の一弥さんもうなずきます。

マスターするまでに10年はかかるという板付け。角をつけるのが難しいそうです。

板付けしたかまぼこは、5代目が考案した火床(ひどこ)と呼ばれる200℃の電気窯に入れ、熱が均一に通るよう場所を入れ替えながら、30分ほどじっくりと焼き上げます。「関西では蒸してから焼く焼き板が多いですが、うちでは蒸さずに生のすり身から焼き始めます。昔は上下から炭火で焼いていたと聞いています」と6代目。焼きだけで火を通すことから「焼とうし」。創業以来変わらない伝統の製法です。

焼きだけで仕上げるため、「かいや」のかまぼこには香ばしい焼き色が付いています。

昔からのおなじみさんがいる限り味は変えない

かまぼこはもともと、竹の棒や木の板にすり身を塗って焼いたのが始まり。江戸時代になって蒸しかまぼこや蒸してから焼くかまぼこが登場しました。「かいや」はかまぼこ本来の製法をずっと受け継いでいるのです。

弾力があり、かむごとに上品な甘さと本みりんの香りが立つ「焼とうし蒲鉾」は、京都の高級料亭に認められ、おせち料理に採用されているほか、神戸の老舗とんかつ店「武蔵」では1939(昭和14)年の創業以来、メニューの一つになっています。「1日2日置くと、味がなじむというか、うまみが増すんですよ」と話す6代目の表情は自信に満ちあふれています。

ハモだけを使うようになったのは4代目のころから。以降、先代の仕事を見て育った代々の主人が、同じ味になるよう努力を重ねてきた結果が今につながっています。「昔のスタンダードを作り続けているだけの話。世の中の嗜好(しこう)は変わっていくかもしれませんが、うちのかまぼこをおいしいと食べてくださるおなじみさんがいる限り、味が変わってはいけないと思っています」

ただ一つの商品「焼とうし蒲鉾」は1枚3,240円(送料別)。12月の販売のみ11月中に予約が必要(電話・FAXで受け付け)。

やりがいを持って継いでくれたらうれしい

大学卒業後は商社に勤めていたという7代目の一弥さん。「家業を継げ」と言われたことは一度もなかったといいます。「いつの頃からか、自分で一から関わることができるものづくりっていいなと思うようになり、20年前にかまぼこ作りの世界に入りました。好きじゃないとできない仕事ですから、息子にも無理強いするつもりはありません」。8代目候補はまだ高校生だとか。「彼がうちの仕事を楽しそうと思い、やりがいを持って継いでくれたらうれしい」とほほ笑みます。

「正直に真面目に作り続けていれば、必ず、かいやの味を好きになってくれる人が現れます。ふらっと店に入ってきてくれる人も大歓迎です」と6代目。時代は変わっても「焼とうし蒲鉾」の味は変わることなく、これからも食通をうならせることでしょう。

戦後すぐに建てられた作業場兼店舗は合掌造り。「夏場は暑さがちょっとましです」と6代目。
かいや
神戸市兵庫区本町1-4-16
TEL・FAX:078-671-5647
営業時間:9:00~17:30
定休日:日曜、祝休日、年末年始
アクセス:地下鉄「中央市場前」駅から徒歩約10分
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