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清荒神の参拝客を笑顔にする和菓子店

火の神、かまど(台所)の神である「荒神さん」として親しまれている清荒神清澄寺。阪急「清荒神」駅から続く約1㎞の参道には、古くからの店舗が軒を連ねています。昔ながらの和菓子店も多く、飾り気のない甘さは参拝客に愛されています。

創建1100余年を誇る神仏習合の「荒神さん」

火を扱うかまど(台所)がにぎわえばその家は繁栄するといわれ、家内安全や商売繁盛を願って多くの人が訪れる清荒神清澄寺。創建は896(寛平8)年、「平家物語」にもその名が登場する神仏習合の古さつです。

開創当時は猪名の平野や武庫の浦が一望できる山の尾根に清澄寺が、現在の地である西の谷に荒神社が設けられました。源平合戦や戦国時代の戦など幾度も兵火に遭いますが、荒神社だけは焼け残ったといいます。諸堂が今の場所に再建されたのは江戸時代。その頃になると、大阪方面から有馬温泉に向かう人が旅の途中に立ち寄ったといわれています。

境内は神社の風景と仏閣の風景が同居しており、樹齢400年を超える大銀杏や、湧き出た霊水で目の病を癒やしたという「眼神祠」、一心に一つだけを願えばかなう「一願地蔵尊像」など、数々のパワースポットが点在しています。 ユニークな言い伝えがあるのが、開創の折に荒神尊が降り立ったと伝わる「荒神影向(ようごう)の榊」。ここに供えられたお賽銭を持ち帰って紙に包み、財布に入れておけば財運アップが期待できるとか。ただし、次のお参りの時には持ち帰った倍のお賽銭を返さないといけないそうです。

一願地蔵尊像に手を合わせる人たち。一つしか願ってはいけません。

参道最初の店はよもぎ餅を出す茶店

参道は「龍が天に昇る姿」をイメージして造られたといわれており、約1kmのなだらかな坂道沿いに飲食店や土産物店、神具・仏具店などが立ち並びます。路傍の看板やのぼりで目にするのが、きんつばや炭酸せんべい、もなかといった和菓子の文字です。

「参道に最初にできた店は、よもぎ餅を出す茶店でした」と教えてくれたのは参道に神祭具・仏具店「加藤敬神堂」を構える金子二郎さんです。1958(昭和33)年に発行された「清荒神(清澄寺縁起)」によると、大正の初め頃、寂しい山道だった参道の中ほどに1軒の茶店ができ、よもぎ餅を売り出したところ、長い間、清荒神唯一の店として繁盛したとのこと。そこから段々と店が増え、昭和30年代には100店以上になりました。「阪神・淡路大震災以前はもっと店も多く、駅近くの市場に入居している店も合わせると150軒ほどありました。参道に和菓子店が多いのは、やはり、お土産にちょうどいいからではないでしょうか。小腹を満たすために道すがら食べることもできますしね」と金子さんは話します。

参道には昔ながらの和菓子店が点在しています。
「よもぎ餅を出す茶店が始まりでした」と金子さん。

懐かしさ漂う和菓子に心まで温まる

「加藤敬神堂」を後に、参道の和菓子店をたどります。よもぎ餅が店頭に並ぶ「日乃出庵」は1997(平成9)年から営業。比較的新しい店にもかかわらず、餅をはじめ赤飯やおはぎ、串だんごなど気取りのないラインアップには昭和の風情が漂います。商品は全て、朝に作った出来たて。「いい素材を使って昔ながらの作り方で手作りしています」と店主の瓢風康彦さん。「日持ちはしないけれどおいしいものを、これからも作り続けたいと思います」

「日乃出庵」では冬場だけ「でっち羊かん」を製造販売しています。

「三宝堂」の商品は、ユズ風味の白あんを薄めの皮で包んだ「柚子もなか」と「つぶあんもなか」の2種類のみ。「約70年前に創業し、もなか一筋です。一つ一つ丁寧に作ったもなかは、皮とあんがなじむまで一日寝かしてから販売しています」と、2代目の宮津卓男さんは話します。

もなかの専門店「三宝堂」。震災までは甘味処も営んでいたそうです。

昨年、創業50周年を迎えた炭酸せんべいの「竹林堂」。かつては自社で製造もしていましたが、業態を変更し、現在は他店から仕入れた炭酸せんべいや各種手焼きせんべい、冬季限定の手作り無添加のでっちようかんなどを扱っています。印象的なのが「こぼれ梅」という商品。「そのままおやつとして食べることができる本みりんの搾りかすです。白くてぽろぽろしていて、その姿が散った後の白梅の花びらに似ているころから、この名が付いたそうです」と、ご主人と共に店を切り盛りする藤本みさ子さん。昔は専門店も数軒あり、「こぼれ梅」の袋を片手に参道を歩く参拝客の姿が冬場の風物詩になっていたそうです。

以前は店内で炭酸せんべいを作っていたという「竹林堂」。
みりんの搾りかす「こぼれ梅」は甘くておやつにぴったり。

きんつばを作っている様子が外から見える「泉寿庵」は、清荒神清澄寺の公式まんじゅう「清荒神まんじゅう」も製造している和菓子店です。きんつばのあんは、北海道の特定農家が肥料をできるだけ使わずに栽培した小豆を素材に上品な甘さに仕上げ、小豆そのものの味を最大限に生かしています。誘惑に負け、きんつばを1個注文。「すぐに食べるのなら」と手渡してくれた熱々のきんつばに、心までほっこりしました。

公式まんじゅうはこの店では「荒神さん」の名で販売。清荒神売店では8個入りの箱で売られています。
清荒神清澄寺
宝塚市米谷字清シ1
TEL:0797-86-6641
アクセス:阪急「清荒神」駅から徒歩約15分
日乃出庵
宝塚市清荒神3-10-24
TEL:0797-87-7018
営業時間:9:30~16:00
定休日:不定休
三宝堂
宝塚市清荒神3-1-6
TEL:0797-86-3358
営業時間:9:30~16:30
定休日:不定休
竹林堂
宝塚市清荒神3-2-10
TEL:0797-84-3763
営業時間:8:00~17:00
定休日:不定休
泉寿庵
宝塚市清荒神1-17-10
TEL:0797-86-3005
営業時間:9:00~17:00
定休日:なし
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