貴重な人形に出合えるディープな空間
「神戸ドールミュージアム」はその名の通り、表情豊かな西洋人形「ビスクドール」や、世界的にも珍しい機械仕かけ人形「オートマタ」を展示した人形の館です。ひと味違ったミュージアムへ行ってみませんか。
人形の歴史と文化を伝える
2002(平成14)年、神戸・三宮にオープンした「神戸ドールミュージアム」。2020年に垂水区にある3階建ての一軒家の2階へ移転しました。階段を上ってすぐ、ガラスケースに入ったビスクドールの端正な横顔が目に飛び込んできます。「外国の人形」エリアにたたずむと、まるで19世紀の西洋にタイムスリップしたような気分になります。
同館の展示物はコレクターの間でも貴重とされるブリュー社のビスクドールやギュスターブ・ヴィシィーが制作したオートマタなど、ミュージアムを運営・管理する藤野賢二さんの祖父母が趣味で収集していたもの。「100年以上にわたる人形の歴史や文化を伝えていきたい」という思いから、家族で協力してミュージアムを設立しました。
展示室は「外国の人形」をはじめ「日本の人形」「オートマタ」「ドールハウス」の4つのエリアで構成。移転後に市松人形などの日本人形や、18世紀の英国・アン女王時代の人形などを増やしたことで、バリエーションもより豊かになったといいます。
「来館者の大半は、30代から70代の女性。県外から訪れる人や、親子連れも多いです」
当時の技術が光るビスクドールの瞳
同館の見どころの一つがビスクドール。フランス語で2度焼きするという意味の「ビスキュイ」に由来し、顔の部分に2度焼きした磁器を用いているのが特長です。19世紀のフランスで、流行のファッションを貴婦人たちに伝えるために成人女性を模して作られたファッションドールから始まり、少女の姿をした「ベベドール」が登場すると抱き人形として貴族の子どもの人気を集めました。
「外国の人形」エリアには初期の大人の人形から、全盛期の少女の姿のものまで35体並び、ファッションの変遷も併せて知ることができます。ブルーの瞳と金髪が美しいブリュー社の「ブリュー・ジュン」をはじめ、万国博覧会での受賞歴があるジュモー社、パニエー社、J.スタイナー社などの希少な人形の世界を楽しめます。
「初めて見る人は目に注目してみてください。茶や青といった色味や光彩の深み、立体的な造形の美しさをじっくりと観察してほしいです」と藤野さん。ガラスのプレートを熱して作るペーパーウエートグラスアイなどが用いられたビスクドールの目には、語りかけてくるようなつやがあります。白目の部分となる土台の上に色ガラスで繊細な細工が施され、透き通るような美しい瞳を実現しています。
希少な機械人形を展示
18~19世紀のヨーロッパで生まれた「オートマタ」のエリアには、レオポルド・ランベールの「ピエロの曲芸師」やルレー・デカンの「平行棒のピエロ」など、動きを想像するだけでも愉快な人形が並びます。中でも、ひときわ存在感を放っているのがギュスターブ・ヴィシィーの「タバコを吸うダンディー・ルネー」です。たばこを口に挿すと鼻から煙を出し、白目になり、ステッキも動くというもの。「ヴィッシーの作品と出合える機会は少ないので、ぜひ見に来てください」と藤野さん。
いずれの人形もガラスケースに入っているため実際に動く様子を目にすることはできませんが、動いている映像は館内で常時放映されており、そのユニークなしぐさを確認できます。
神戸市垂水区歌敷山1-7-20
TEL:078-705-0080
開館日:火曜、木曜、金曜
開館時間:11:00~17:00
入館料:高校生以上1,000円、小・中学生800円
アクセス:山陽電鉄「霞ヶ丘」駅から徒歩約10分
マップ:https://maps.app.goo.gl/C5pxV2xvLojGx5158
※要予約