和菓子の世界のアジサイ

古くから四季折々の自然美が取り入れられてきた和菓子の世界では、アジサイも多様な形で表現されてきました。目で、舌で、風雅なアジサイをご堪能あれ。

雨に濡れたように輝く2色の花 (菓一條 栄久堂吉宗)

アジサイが咲く西宮・夙川公園の近くにある和菓子店「菓一條 栄久堂吉宗」。先代が50年ほど前に大阪の「栄久堂吉宗」から独立し、この地に店を構えたといいます。

その頃から毎年、梅雨の時季に販売してきたのが上生菓子「紫陽花」。「青紫」と「赤紫」があり、いずれも高知県産のユズを使ったゆず餡を、花や葉の色の餡で包み、立方体にカットしたほのかに甘い寒天「錦玉」をまとわせています。

先代が考案したこのお菓子は、最初は「青紫」だけでしたが、代替わりした後、10年ほど前から「赤紫」も加えたのだそう。「先代の時代、私が赤っぽいものを作ったら『アジサイは青でないと』と作り直すよう言われたこともありましたが、私の代になって赤いのも店頭に並べてみたところ『2色ペアできれい』とお客さまから好評で。以降、両方販売しています」と2代目の吉川壮一さんは話します。

店内には喫茶室もあり、抹茶(1,100円)や煎茶(950円)、緑茶(600円)と一緒に味わうことも可能。「光の角度によって多彩な表情を見せてくれるので、まずは目でじっくり楽しんでいただけたら」と吉川さん。蒸し暑くなるこの季節、透明感あふれる対のアジサイが、今年も涼し気な姿で人々を魅了します。

梅雨が明ける頃まで販売予定の「紫陽花」(各400円)。数量限定のため予約がベター。
季節の上生菓子は常時7種~8種販売。「茶道教室でもよく使っていただいています」と吉川さん。
店先にはカメラ好きの店主自ら撮影した商品写真が並びます。
菓一條 栄久堂吉宗
西宮市羽衣町7-26 ミズキアルペジオ夙川ビル1F
TEL:0798-36-5431
営業時間:9:00~18:00
定休日:木曜
アクセス:阪急「夙川」駅から徒歩すぐ
HP:https://wagashi.gr.jp/
マップ:https://maps.app.goo.gl/ihHdutwvoiUZK6Wc8

雨にかすむ景色に溶け込んだ風情ある姿(芦屋柳月堂 玉川)

先代が1962(昭和37)年に神戸市中央区で創業したという「芦屋 柳月堂玉川」。1992(平成4)年に拠点を芦屋に移し、現在は2代目の安達文輝さんが後を継いでいます。

厚労省認定ものづくりマイスターの称号を持ち、「北海道旭川全国菓子大博覧会2025」では工芸菓子で農林水産大臣賞を受賞した文輝さん。今年は初めてアジサイをモチーフにし、こし餡を練り切りで包んだ上生菓子を6月17日(火)まで期間限定で販売しています。「皆さんがあまり見たことのないデザインにしたいと考え、雨にかすむアジサイを形にしました」

外側の練り切りは、紫とピンクに色付けした餡を組み合わせ、白い餡を薄く重ねることで淡い色調に。紫とピンクが程よく調和しています。さらに、表面には型を押し、大小いくつものアジサイの小花を表現豊かに浮かび上がらせています。

素材にもこだわりが光り、練り切りには上質な白小豆と手亡、中のこし餡には北海道で有機栽培された小豆を使用。「見た目の美しさはもちろん、小豆の風味がしっかり感じられる餡のおいしさも感じていただけたら」と話す文輝さん。

優しい色合いの繊細なアジサイは、控えめながらも存在感があり、静かに美しさを放っています。

奥ゆかしく上品なたたずまいの「紫陽花」(400円)。見ているだけで優しい気持ちになれます。
妻の徳(「心」の上に「一」あり)紗さんと共にのれんを守る文輝さん。大阪・関西万博ではデモンストレーションも行う予定だそう。
昨年の第24回全国菓子大博覧会熊本大会で「名誉総裁賞受賞」した「芦屋かすていら」をはじめ、進物用の商品も充実。
芦屋 柳月堂 玉川
芦屋市大原町9-1-26 ラポルテ東館B1F
TEL:0797-22-0175
営業時間:10:00~18:30
定休日:水曜
アクセス:JR「芦屋」駅から徒歩すぐ
HP:https://ashiya-wagashi.com/
マップ:https://maps.app.goo.gl/AR273nKffod4J6Nf9

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