上質な暮らしを映す旧山本家住宅の庭

1938(昭和13)年に建てられた旧山本家住宅は、「阪神間モダニズム」と呼ばれる独自の文化や生活様式が繰り広げられた西宮市の夙川エリアにあります。和洋折衷様式の邸宅のどの部屋からも見えるように造られた大小の日本庭園は雅趣に富み、ゆとりある階層の心豊かな暮らしを映しています。

関西では珍しい不昧流茶室も

阪急「夙川」駅から北へ歩いて約10分。白い塀に囲まれた旧山本家住宅は西洋の城のような門構えで、邸宅が多い一帯の中でもひときわ重厚感を漂わせています。設計は、茶室の研究家として知られる岡田孝男氏。主屋、表門および塀、門衛所、蔵、茶室の5棟が国登録有形文化財となっています。

玄関を入ると、ステンドグラスが華麗な応接室や、大理石のマントルピースがある客間など洋の空間が広がります。一転して、庭園に面した主座敷と縁側は和の趣。大きく取った掃き出し窓からは、茶室を配した庭が一望できます。

雪見灯籠(とうろう)を中心に、枯池や飛び石、主木の松が絶妙のバランスでレイアウトされた庭園は、主屋から二手に分かれて茶室へと至る露地でもあります。庭石は、最初の施主である実業家、近藤寿一郎氏の地元、鳥取県から運ばれたものだそうです。

茶室は、大名茶人である松平不昧(ふまい)こと松江藩主の松平治郷が考案した不昧流の仕様。関西では珍しい様式でにじり口はなく、客人は大きく開かれた貴人口から入ります。虫食いの柱や薄紅色の外壁、網代の天井など、随所にこだわりを感じさせます。

「庭には四季折々の茶花が植えられています。初夏はドウダンツツジやアジサイがきれいですよ」と話すのは、管理運営する一般財団法人山本清記念財団の橋本さん。庭の茶花は同財団が開催する茶道教室で飾られるとのこと。「教室の生徒さんたちも庭の花を楽しみにしておられます」

主座敷から見る庭。奥には不昧流の茶室がたたずみます。
かれんな花を付けたオウバイ。庭の花樹や山野草に季節を感じることができます。
贅(ぜい)を尽くした茶の間に面する北庭には、松平治郷から贈られたという梅の木。「今でも薄紅色の花を咲かせます」と橋本さん。建物と庭の見学は前日までに要予約(有料)。

こだわりのかき氷で季節を感じる

庭に咲く花で季節を知る優雅な暮らしを垣間見た後は、桜のピンクから鮮やかな緑へと色を変えた夙川沿いを歩いて、阪急「夙川」駅近くのカフェ「あじさいにかたつむり」へ。ロールケーキやプリン、クッキーなどの焼き菓子に加え、旬の素材を使ったかき氷が評判を集めています。

この日のかき氷2種から、「いちごみるく」をセレクト。自家製のイチゴソースと練乳で彩られた真っ赤な姿にテンションが上がります。ひとさじいただくと、ふわふわの氷が一瞬にして溶けてなくなり、同時に、自然な甘酸っぱさが広がります。中にはダイスカットされたイチゴの果肉がたっぷり。その下にはミルクアイスも潜んでいます。「氷は、三重県の鈴鹿布引山系の地下150mからくみ上げた天然水を原料にした純氷です。舌触りが滑らかで、あまり頭も痛くならないです」と店主の由利恵章さん。

かき氷は毎年3月から11月まで、夏はマンゴーや桃といったフルーツ、秋はクリやサツマイモなど、常時2種以上を用意。どんなフレーバーかは、その時々のお楽しみです。「夏場は生菓子の数を減らし、かき氷を3種に増やしています」

邸宅の庭の花や甘味処のかき氷で季節を知る“おいしく豊かな”一日、おすすめです。

かき氷「いちごみるく」(1,200円)。提供中のかき氷のフレーバーは電話かインスタグラムで確認を。「売り切れる場合があるので、予約も受け付けています」
軽い口当たりのロールケーキにクッキーが付く「ロールケーキセット」はドリンク代にプラス200円。
旧山本家住宅(一般財団法人山本清記念財団)
西宮市結善町1-24
TEL:0798-73-6677
開館時間:10:30~15:30(入館は15:00まで)
定休日:日曜、月曜、祝休日
アクセス:阪急「夙川」駅から徒歩約10分
入館料:大人300円、小・中学生150円
HP:https://www.yamakiyo.jp/
マップ:https://maps.app.goo.gl/5o8DivMnX3nTEwhDA
あじさいにかたつむり
西宮市相生町6-4 エメ夙川1F
TEL:0798-74-5377
営業時間:11:00~18:00 ※かき氷の提供は12:00~17:00(L.O.)
定休日:水曜、不定休
席数:テーブル6席
アクセス:阪急「夙川」駅から徒歩すぐ
Instagram:https://www.instagram.com/ajisainikatatumuri/?hl=ja
マップ:https://maps.app.goo.gl/s7XxjML2HR5PduhU9

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