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著名な造園家が手がけた高福寺の日本庭園

神戸市長田区、新湊川の程近くに立つ高福寺には、島根県の足立美術館などを作庭した造園家、中根金作氏の庭園などがあり、心安らぐ自然と伝統文化に触れることができます。知る人ぞ知る、下町の寺の見どころを紹介します。

石と季節の草木で仏教の「涅槃図」を表現

鎌倉時代末期に浄土真宗の寺として創建された高福寺は、神戸大空襲や阪神・淡路大震災など数々の苦難を乗り越えてきました。山門をくぐるとすぐ目に入るのが、1986(昭和61)年に造られた日本庭園「涅槃の庭」。先々代の住職が庭園に造詣が深く、中根氏に依頼したといいます。その名の通り、仏教の「涅槃図」を表現したもので、中央の長く大きな石を横たわるお釈迦様に、その周りの幾分か小さめの石を菩薩に、ツツジなどの植物を人間や動物といった生き物に見立て、少し離れた所には3つの石で阿弥陀三尊を表しています。「梅、ツツジ、ツバキと四季折々で草木が花を咲かせ散っていくという、途絶えることのないさまざまな生命の営みを感じられるお庭です」と現住職の藤末光紹さんは話します。

庭園の向かいに設けられた藤棚は、例年5月上旬に淡い紫色の花を咲かせ、それに合わせて茶会を開いていたこともあるそう。さらに境内を奥へ進めば、足元に20㎝ほどの巨大な松かさが。見上げると10m以上の大きな松がそびえています。「樹齢約80年のダイオウマツです。大晦日にはライトアップもしています」

右手前の大きな石がお釈迦様を表しています。5月にはツツジが咲くそうです。
数年前の藤棚の様子。淡い紫色の花が見事です。

貴重な茶室や墨絵の大家が描いた襖絵も

境内には他にも和の文化に触れられる場所があります。その一つが茶室「悠々亭」。赤穂藩筆頭家老で義士の一人である大石内蔵助が密談に使ったと伝わる京都・来迎院の茶室を模しており、つくばいが置かれ季節の草花が植えられた茶庭も備えています。

すぐそばには、斜面を下る石段が。「地下の門徒会館『自然堂』に続いています。斜面の下から眺める木々と空もきれいですよ」と藤末さん。自然堂にある襖(ふすま)絵も見どころの一つです。かつて寺の裏で暮らしていた円山派の墨絵の大家、北井真生氏が手がけた作品で、戸襖2枚にわたって蓮がダイナミックに描かれています。「自然堂が使われていない時は見学できるので、お気軽にお声がけください」

寺を見学した後は、徒歩5分ほどの所にある地域の交流拠点、まちの駅「MANONOMA」内のコーヒーショップ「MA COFFEE」で一休み。明治時代に創業したよろず屋をリノベーションして2023(令和5)年にオープン、こだわりのコーヒーや手作りスイーツなどが味わえます。コーヒーは酸味の少ない豆を焙煎したこだわりのオリジナルブレンドで、味わいをまろやかにするというオーナーこだわりの日本六古窯「常滑焼」のカップで提供されます。スイーツは甘さ控えめでレモン果汁が爽やかなチーズケーキをはじめ数種あり、テイクアウトも可能です。

明るい日差しが降り注ぐ昼下がり、奥深い日本文化の余韻に浸る心穏やかな時間が過ぎていきます。

三方に明かり戸を設けた茶室「悠々亭」。
「MA COFFEE」の「ケーキセット」(1,100円)。
高福寺
神戸市長田区西尻池町4-1-22
TEL:078-611-4470
開門時間:8:00~17:00
アクセス:地下鉄「駒ヶ林」駅から徒歩約10分
HP:https://manosan-koufukuji.or.jp/
エムエー コーヒー
神戸市長田区苅藻通2-4-20
TEL:090-9721-8194
営業時間:14:00~18:00(土曜は17:00まで)
営業日:金曜、土曜
席数:カウンター4席、テーブル11席
アクセス:地下鉄「苅藻」駅から徒歩約5分
HP:https://machinoeki-kobe.com/service01/
Instagram:https://www.instagram.com/ma_coffee_kobe/
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季節の行事や話題を中心に月替わりで設定したテーマに沿って、食、文化、歴史、自然などさまざまな視点から神戸・阪神間の奥深い魅力に迫ります。
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