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平尾誠二さん行きつけの店

「ミスターラグビー」の愛称で神戸製鋼の7連覇をはじめ日本のラグビー界の発展に大きく貢献した平尾誠二さん。2016(平成28)年、病のため53歳の若さでこの世を去りましたが、なじみの店は今も健在です。彼が何度も足を運んだ行きつけの2軒を紹介します。

ハイボール片手にくつろぎのひと時を過ごす(MY-BAR)

神戸・三宮。ビルの地下にあるシガーバー「マイバー」の扉を開けると、マスターの片山幸彦さんが「いらっしゃい」と渋い声で迎えてくれます。店内を見渡すと、平尾さんのユニフォームや生き生きとプレーする若い頃の写真が次々と目に飛び込んできて、彼が輝いていた時代が瞬時によみがえってきます。

平尾さんが初めて店を訪れたのは、三十数年前、神戸製鋼に入って2年目の24歳の時でした。たまたま目当ての店が満席で、この店を見つけて入ってきたそう。「当時は葉巻を吸っていたわけでもないのに気に入ってくれたみたいで。後日また来られたので、閉店後にわが家に誘って酒を酌み交わしました」。片山さん自身はラグビーの経験はなく年齢も16歳も離れていましたが、馬が合ったのかすっかり打ち解け、以降、常連客に。週5日来店したこともあったようです。

定位置は入り口近くのカウンター席で、いつもハイボールをオーダーし、たわいない世間話をしたりぼんやり物思いにふけったりとリラックスした時間を過ごしていたといいます。時にはラグビー仲間を連れて来ることもあり、徐々にラガーマンの客が増えてきたのだとか。「30年近く見てきましたが、常に紳士な飲み方で、酩酊(めいてい)することなど一度もありませんでしたね」と振り返ります。

2015(平成27)年にがんが発覚すると急に姿を見せなくなり、風のうわさで病に倒れたことを知ります。翌年、仲間に付き添われて久々に来訪した平尾さんに、「やせ細った彼を見たらお茶しか出せなくて。今思えばハイボールを作ってあげればよかった」と悔やみます。滞在したのは15分ほど。「昔は一緒に階段を上ってビルの玄関で見送っていました。その日も私の心配をよそに無理して上って。彼なりの最後の意地だったんでしょうね」。その年の秋、帰らぬ人に。8年たった今でも、彼をしのんで全国からラグビー関係者やファンが店を訪ねて来るそうです。

「気取らなくていい男でした。出会えて良かったです」と片山さん。平尾さんの席には写真が飾られ、今宵(こよい)もいつもの酒がグラスに注がれます。

平尾さんの特等席にハイボールを置き、「今日も見守っててな」と声をかけるのが日課だそう。
「彼にも葉巻を勧めたら気に入ったみたいで、おいしそうに吸っていました」と懐かしむ片山さん。
平尾さんがよく飲でいたスコッチウイスキー「フェイマスグラウス」。ラベルにはスコットランドの国鳥、雷鳥が描かれています。おつまみ付き1杯2,000円。
マイバー
神戸市中央区下山手通2-17-10 ライオンビル三宮館B1F
TEL:078-333-8870
営業時間:18:00~23:00
定休日:日曜
席数:カウンター8席、テーブル6席
アクセス:各線「三ノ宮」「三宮」「神戸三宮」駅から徒歩約10分

パスタを頬張りながら日本のラグビーに思いはせる(洋風居酒屋Bistro de 純)

神戸・三宮にはもう一軒、平尾さんの行きつけだった店があります。表通りから路地を入った場所にある隠れ家的な雰囲気の「洋風居酒屋Bistro de純」です。元ラガーマンでホテルでフランス料理の修業を積んだ店主の柴藤浩二朗さんが、1995(平成7)年に開業しました。

平尾さんが初めて訪れたのは1997年。ちょうど日本代表の監督に就任する前で、ラグビー以外の知り合いに連れられて数人で店に入ってきたといいます。「ラグビー部時代の仲間のつながりで来てくれるラグビー関係者はいましたが、『まさかあの平尾さんが』と驚いたのを覚えています」

以来20年近く、平尾さんは時折店を利用するようになり、多い時には週2回来たことも。有名人だと周りに騒がれることを嫌がり、一人の時はカウンター席の一番奥の目立たない場所へ。料理は「アラビアータ」と「ブルスケッタ」を頼むことが多く、パスタが出来上がるまで、先に赤ワインとブルスケッタを楽しむのが常だったといいます。

誰かと一緒に来た時は聞き役になることが多く、他の人の話をにこにこしながら聞きつつ時折絶妙な突っ込みで場を和ませていたそう。時にはラグビー関係者と日本のラグビーの将来について熱く語り合うこともあったようです。「気さくで飾らない方で。日本のラグビーについては『一歩ずつやるしかない』とか『勝利を知ってる外国人を入れな』とか情熱的に話されていました」

病に倒れた2015(平成27)年から、ぱったりと来店が途絶えます。彼を知る他の客に尋ねても皆口を濁すばかりだったことから事情を察したという柴藤さん。

翌秋、平尾さんが旅立つと、別れを惜しんでラグビー関係者やファンか各地から来店。「一ラグビーファンとして、彼は私の永遠のあこがれです。ここに来て、日本のラグビー界にこんなに素晴らしい人がいたということを思い出してもらえたら」。8年の時を経ても、「ミスターラグビー」の存在は色あせることなく、この店でしっかりと生き続けています。

店内の一角には、平尾さんやラグビーに関する本などがずらりと並びます。
平尾さんがよく頼んだという「アラビアータ」(850円)と「ブルスケッタ」(350円)。
「発言も振る舞いも、全てが格好良かったです」と振り返る柴藤さん。
洋風居酒屋 ビストロ デ ジュン
神戸市中央区中山手通1-9-6
TEL:078-393-0070
営業時間:18:00~23:00
定休日:日曜
席数:カウンター9席、テーブル10席
アクセス:各線「三ノ宮」「三宮」「神戸三宮」駅から徒歩約5分
Instagram:https://www.instagram.com/bistro.de.jun/
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