プロ用の包丁で台所からエコな暮らしを
神戸市兵庫区の神戸市中央卸売市場にある包丁専門店「堺正元刃物店」が扱うのは、大阪・堺特産の堺打刃物。良質の鋼(はがね)を素材に手打ち鍛造を行った高品質なものばかりで、まめに研ぎ直せば、切れ味はそのままに長く使い続けることができます。
包丁は使い捨ての商品ではない
同店は大正後期に神戸・湊川で開業、1932(昭和7)年、神戸市中央卸売市場が兵庫区の臨海部に開設されると同時に入居、移転オープンしたプロ向けの包丁専門店です。和包丁をはじめ、洋包丁や中華包丁、はさみなど、幅広い商品を取りそろえています。「プロが使う包丁がスーパーや量販店で売っている包丁と違うのは2点。切れ味が長持ちすることと、研げば小さくなるまで使えることです」と話すのは、4代目店主の辻元明さん。「包丁は、使い捨てではなく品質のしっかりした一本をメンテナンスしながら長く使用するもの」と断言します。
和包丁は、大阪・堺の職人による手打ち鍛造品で、品質の良い「安来鋼」と鉄をたたいて包丁の形にし、焼き入れもしっかり丁寧に行っています。洋包丁は、通常と異なり、切れ味がより持続するスウェーデンステンレス鋼・V金10号を使用。いずれも研ぎや柄替えなどを行えば、家庭なら20年から30年もつそうです。「大事なのは、切れ味が悪くなった時にきちんと研いでやること。普段は自分で研ぎ、1、2年に一度、うちの店でのメンテナンスを交えてもらえれば」と辻さん。研ぎ方が分からない人にはマンツーマンの研ぎ方教室も実施しています。
また、切れ味の良い包丁は食材の繊維をつぶさないので、断面が変色するスピードも遅いとか。「切れにくい包丁でキャベツを切ると断面がすぐ黒くなり、その部分を捨てることになります。いい包丁を使うことは、食品ロスの削減にもつながります」
植物由来樹脂の柄や握力が弱い人向けの一本も
同店は、包丁の柄の部分にもこだわっています。HACCP(※)基準の管理が容易な樹脂や、地球に優しいトウモロコシが原料の樹脂を柄にした包丁は、軽くて扱いやすいのも魅力。同素材のまな板もあります。
さらに、脳卒中の後遺症などで握力が弱い人の手にフィットする完全オーダーメードの樹脂柄包丁を、2年間の開発期間を経て2023(令和5)年に発表しました。「お客さんから相談を受けて友人の理学療法士に聞いてみたところ、『柄の部分を3Dプリンターで作ればいいのでは』と言われ、産業デザインの専門家がいる神戸電子専門学校に話を持ちかけました」と辻さん。「自分でできることが一つでも増えると前向きになれるはず。自立生活を応援したいですね」
家庭で使うなら、2万円くらいのものがおすすめだそう。20年使えるのであれば、リーズナブルな価格といえます「いい包丁を使うと、何より料理がおいしくなりますよ」と辻さんは笑顔を見せます。プロ用の一本で、台所からエコな暮らしを始めてみませんか。
※HACCP…製造過程において、有害な物質や異物が混入する危害(健康への悪影響)を把握した上で、それらを除去または低減させるために特に重要な工程を管理する衛生管理の国際的な手法。
神戸市兵庫区中之島1-1-4 神戸市中央卸売市場内
TEL:078-672-8216
営業時間:5:30~16:00
定休日:日曜、祝休日、市場が休みの水曜
アクセス:地下鉄「中央市場前」から徒歩すぐ
HP:https://sakaimasamoto.com
マップ:https://maps.app.goo.gl/ya4dXyC1PU3nXxJGA