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幻のパン、KÖLNのボームの謎を探れ!

神戸の老舗ベーカリー「KÖLN」には、なかなか現れないパンがあることをご存じですか。その名は「ボーム」。さまざまな菓子パンを少しずつ集めて圧縮したもので、そのビジュアルはまるでケーキのようです。なぜめったに現れないのか、その謎を探りました。

圧縮することで多彩なパンの味が融合

阪急「神戸三宮」駅からすぐの所にある「KÖLN三宮店」。厨房ではボームの仕込みが行われています。30㎝四方ほどのクッキー生地の上に、ひと口サイズにカットした数種類のパンを隙間なく並べ、全体にカスタードクリームを塗ります。この工程を3回繰り返し、重しをしてしばらく置きます。高さ4.5㎝まで圧縮できたら、最後にクッキー生地をかぶせてオーブンへ。焼き上がったものを縦4.5㎝、横8㎝にカットして出来上がりです。「圧縮が緩いと元のパンの味が残ってしまいます。十分に圧をかけることで、いろいろなパンの味が融合してボームの味になるのです」と話すのは店長の宮本さんです。

使用するのは、焼成から1日たっていない、あんパンやデニッシュ系といった甘いタイプの商品です。「生のフルーツが入ったもの以外はほとんど使います。ボームを1個食べると、ケルンの甘いパンを3種類は食べたことになります」。ただし、どのパンが入っているかは一期一会。ボームファンの間では、マロンパイが入っていれば「当たり!」とされ、あんパンが入っていないものは「すかすかボーム」と呼ばれているそうです。

小さくカットしたパンを押し付けながら並べていきます。
上火は200℃、下火は230℃で30分強焼きます。
切り分ければマーブル模様の美しい断面が現れます。

30年以上前に自然発生的に誕生

ボームが生まれた時期や経緯は、実のところ明らかにはなっていません。「長年ケルンで働いている職人に聞き取りをしたら、30年前には既にあったということでした。捨てるのはもったいないから活用しようくらいの軽い気持ちで、自然発生的に生まれたようです」と広報の千葉さん。レギュラー商品ではないためレシピが残っておらず、作り方は先輩から後輩へと口伝えで継承されてきました。「作らなくてはいけない商品ではなく、作れる時だけ作ろうといった緩やかな感じで続いてきたもの。当時はSDGsという言葉もない時代ですから無意識だったと思います」

ボームというネーミングも、年輪のような断面から当時いたドイツ人の職人が「バウム(ドイツ語で年輪)」と呼んでいたものがボームになったとか。「あくまでも一説によると、ですが」と千葉さんは笑います。

現在、ボームを提供しているのは三宮店とメイン六甲店の2店舗のみ。毎日作るわけではなく、作る量もその日によって違うので見つけるのは至難の技。まさに幻のパンといえます。「残り物を集めただけではなく、まったく別のスイーツとして昇華させています。なかなか出合えないかもしれませんが、探してみてください」と千葉さん。三宮店では昼ごろに並ぶことが多いそうです。SDGsに緩く貢献しているボーム。多彩なおいしさが詰まった唯一無二の味をぜひ、お試しあれ。

店に並んだボーム(259円)。レアな光景です。
ケルン三宮店
神戸市中央区北長狭通1-2-13 ニューリッチビル1F
TEL:078-945-7009
営業時間:9:00~22:00
定休日:なし
アクセス:阪急「神戸三宮」駅から徒歩すぐ
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