使用済みの点字紙を使った手作り文具
使用後の処分に困ることが多い点字紙。厚手で良質な紙のため、捨てづらいとの声もあります。芦屋市にある「就労支援センター ワーク・キューブ」では、この紙を再利用し、点字の凸点を生かしたメモ帳やレターセットなどを制作・販売。「もったいない」から生まれた「かわいい」新感覚文具にファンが増えています。
凸点をつぶすことで印刷が可能に
ベージュの建物に映えるブルーの軒先テント。阪神「芦屋」駅の北、閑静な住宅街にある就労支援センター ワーク・キューブは就労継続支援A型事業所です。現在27人の利用者のうち、8人が文具の製造に携わっています。
芦屋市身体障害者福祉協会から、「読み終えた点字紙を変身させてほしい」と持ち掛けられたのは2021(令和3)年。試しに印刷するとポコポコした凸部分にインキが乗らず、文字が欠けたり、凸点が白のまま目立ったり。試行錯誤の末、凸点を麵棒でつぶし平らにすることにより問題が解決し、商品化の道が開けました。
デザインと印刷を担当するのは、発達障害がある西田佳代子さん。「頭の中はいつもポコポコのこと」と笑います。残りのメンバーは、印刷した用紙をカットし、ページをそろえ背表紙を当てて糊付けするなど製作を担い、さらに商品の封入から発送までを行います。
「みんなこだわりが強い分、きっちりと丁寧な仕事ぶりです。待っているお客さまがいるのがやりがいになり、出席率もよくなりました」と、事業所を運営する株式会社プランツ・キューブ代表の鍋島奈穂子さんは話します。
点字を身近なものにする魅力的な商品
昨年8月に誕生した第1作は「ハーブの一筆箋」。「最初は凸点の生かし方が分からず、ただ得意な花や動物の絵で点を目立たなくするだけでした」と振り返る西田さんですが、徐々にいろいろなアイデアが浮かびます。一番人気は、凸点を星や雨粒、気泡に見立てた「星空」「雨」、そして7月に完成した「海」シリーズのメモ帳、ノート、レターセットです。しんとした夜空、やわらかな雨、透明感のある海など、グラデーションで描き出す多様なブルーの美しさが魅力です。
「点字の柄の出方が違うので、二つと同じ物はありません。紙がしっかりして書きやすいのも特長です」と鍋島さん。福祉関係のイベントへの出店では高齢の女性が「孫や周りの人に点字というものを教えたい」と大量に買い求め、ネットでの購入者からは「ポコポコの手触りがいい」「引っかかりなど気にならずに書ける」といった感想が届くなど好評です。
西田さんは、「この仕事で初めて点字を知りました。夢は点字文具というカテゴリーをつくること。点字を身近なものとして浸透させたいと思います」。今年の冬には、人気のシリーズに「雪」が加わる予定です。
芦屋市公光町3-4
TEL:0797-21-5577
営業時間:10:00~16:00
定休日:土曜、日曜、祝休日
アクセス:阪神「芦屋」駅から徒歩約5分
HP:http://plants-cube.o.oo7.jp/