窓ガラスなどを華麗にアップサイクル

石田さんは5年ほど前、ガラスアーティストで環境工学を専攻する大学教授の岡本覚さんから「AROMACRYSTAL®」を紹介されます。特許技術を用いて焼き上げたガラスの粒の集合体にアロマオイルを垂らすと、粒と粒の無数の隙間にオイルが広がっていき、揮発性により蒸発して香りを放つというユニークなものでした。

見たことのない製品に創作意欲をかき立てられ、製造方法を教わり、一から制作。アクセサリーやオブジェ、照明器具など、湧き上がるアイデアを次々と形にしていきました。

材料には、廃棄された窓ガラスなどを使用しています。まずは粘土で仕上がりと同じ「原形型」を作り、それを耐火石こうにはめて型を取り、そこに粒状に砕いたガラスを入れて焼成します。「通常、ガラスは1,200℃以上で焼くと一つの塊となりますが、800℃くらいに抑えて焼くことで粒を残したままにできます。低温で焼くのも環境への配慮につながります」と石田さん。

焼成作業は障害福祉サービス事業所に委託

焼成作業は、大阪府内にある障害福祉サービス事業所に委託。「1点1万円ほどする高価なもの作りに携わることで、ご本人たちのやりがいや自信につながり、それを見たご家族の方にも喜んでいただければという思いでお願いしています」

2020（令和2）年、オンラインで販売をスタートすると、完成品だけでなく自分で作りたい人向けの製作キットもラインアップに加え、好評を得ました。同時に、AROMACRYSTAL®を世に広めるため、ハンドメイド教室などでレッスンに取り入れて作り方を教える「アンバサダー」や、オリジナル作品を創作する「クリエーター」も募集。現在アンバサダーは40人、クリエーターは5人と、その輪は少しずつ広がりつつあります。

SDGｓに配慮したアイテムは百貨店のバイヤーの目にも留まり、昨年からは全国各地での催事に出展するように。「SDGｓの視点から価値があるだけではなく、商品そのものが魅力的で、購入してくださった方に心から喜んでいただけるものを提供したいと考えています」。7月上旬にはフランスの展示会に出展、世界に向けての発信にも力を入れ始めました。「ヨーロッパは日本よりもＳＤＧｓに関心が高いので、多くの方に知っていただけたら」

これからもAROMACRYSTAL®で環境や社会はもちろん、手にした人もハッピーになれる作品の制作を目指します。