有馬の女性料理人のお雑煮レシピ
地域や家庭によって味付けや具材が異なり、多種多様なスタイルが存在するお雑煮。神戸の奥座敷、有馬温泉で修業を積む2人の女性料理人に、わが家の一杯を教えていただきました。
焼き餅で香ばしく 白味噌のお雑煮
神戸電鉄「有馬温泉」駅から緩やかな登り坂を歩くこと約15分、樹木の茂る山を背にたたずむのが「天地の宿 奥の細道」です。かつてテレビ番組「料理の鉄人」で注目され、現在は兵庫県日本調理技能士会の代表理事を務める大田忠道さんが2006(平成18)年に開業しました。
同宿では近年、若手女性料理人が活躍しています。総勢15人の料理人のうち、女性は4人。そのうちの一人、神戸生まれの河原麻有さんが披露するお雑煮は、神戸で主流の丸餅・白味噌仕立てです。「祖母から教わりました。一般的に丸餅はゆでて入れますが、焼いた方が香ばしくておいしいと、うちはこの形です」と河原さんは話します。
具材は神戸の白味噌雑煮で定番のものですが、今回はニンジンとダイコンを重ねた日の丸をあしらった盛り付けに。「赤い色が加わると華やかですよね。祖母の家では正月料理で余ったエビの頭をだしに加え、飾りとしても使っていました」と話します。
白味噌をベースにした紅白のめでたいお雑煮は、こく深く優しい甘みでほっこりさせてくれます。


【材料(2人分)】
丸餅2個、ダイコン1/4本、金時ニンジン1/4本、サトイモ2個、三つ葉4本、白味噌90~100g、だし(昆布5~10g、いりこ4~8g、かつお節10~15g)500cc
【作り方】
1 鍋に水、昆布、頭とはらわたを除いたいりこを入れ、一晩置いてから火にかけ、沸騰する直前に昆布といりこを取り出し、かつお節を加えてひと煮立ちさせ、こす。
2 ダイコン、ニンジンは皮をむき、5㎜ぐらいの輪切りにしてゆでる。
3 サトイモは皮をむいて1㎝位の輪切りにし、一度水にさらしてからゆでる。
4 餅は食べる直前に焼く。
5 1を火にかけ、白味噌を溶き入れて味を調え、少し煮立せる(豆臭さがなくなり、とろみが付き濃厚になる)。
6 2と3を加えて温める。
7 餅が椀に付かないよう椀の底に野菜を敷き、餅をのせ、ダイコンとニンジンを重ねて日の丸にあしらい、白味噌汁を注ぐ。

1994(平成6)年神戸市生まれ。大手自動車メーカーのディーラーを経て結婚・出産後、夫が他界。調理師免許を取得するため神戸国際調理製菓専門学校調理科へ。2022(令和4)年株式会社サンプランニングに入社、天地の宿 奥の細道調理部へ配属。
ささみであっさり 澄まし汁の雑煮
2人目は、今年入社した中川奏来さん。姫路で生まれ、丸餅・すまし汁で育ったといいます。穴子を入れたりイクラをのせたりする家庭もあるそうですが、中川家では、鶏のささみを使っています。「実家で犬を飼っており、お正月は犬もささみだけでも一緒に味わって皆で新年を祝えるようにという思いで、母が始めたようです」と中川さん。
また、姫路は練り物の製造が盛んなこともあってか、かまぼこを加える家も多いといいます。「うちでは焼き色の着いたかまぼこを使っていますが、今回はお正月らしく華やかに紅白の色板タイプにました」。魚介のうまみをたっぷり含んだすっきりとした一杯は、白味噌仕立てとはまた違った味わいを楽しめます。


すまし汁の雑煮
【材料(2人分)】
丸餅2個、ダイコン1/6本、金時ニンジン1/4本、ホウレンソウ1株、鶏ささみ1本、かまぼこ50g、だし(いりこ15g、かつお節20g)500cc、薄口しょうゆ大さじ1、塩適量、みりん小さじ2
【作り方】
1 鍋に水、頭とはらわたを除いたいりこを入れ、一晩置いてから火にかけ、沸騰する直前に取り出し、かつお節を加えてひと煮立ちさせ、こす。
2 野菜の皮をむき、ダイコンは短冊、金時ニンジンは花形に切り、ゆでる。
3 ホウレンソウをゆで、ざく切りにする。
4 鶏ささみは1のだしでゆで、粗熱が取れたら細く割き、ほぐしておく。
5 餅は食べる直前にゆでる。
6 1を火にかけ、薄口しょうゆ、塩、みりんで味を調え、ダイコン、ニンジン、厚さ5mmくらいに切ったかまぼこを入れて温める。
7 椀に野菜と餅を入れ、バランスを見ながら具材を整え、すまし汁を注ぐ。

2005(平成17)年姫路市生まれ。料理人を目指し神戸国際調理製菓専門学校調理科へ。女性料理人が活躍できる職場に魅力を感じ2025(令和7)年、株式会社サンプランニングに入社、天地の宿 奥の細道調理部へ配属。