年に一度だけ出会える神呪寺の本尊
西宮のシンボルともいえる標高309mの甲(かぶと)山。その名のごとく、かぶとの鉢のような姿をした小高い山の中腹に神呪(かんのう)寺はあります。本堂に安置されている本尊、木造如意輪観音座像は平安時代の作で国指定重要文化財。年に一度、5月18日に公開されています。
日本三如意輪の一つに数えられる秘仏
阪神バスを「甲山大師」で降りると、目の前に神呪寺へと真っすぐに続く石段が現れます。左右に生い茂る木々をめでながら上ること約100段。境内には本堂を中心に大師堂、不動堂などが横一線に並び、薫風渡る中、落ち着いたたたずまいを見せています。
創建は831(天長8)年。淳和天皇の妃(きさき)、眞井(まない)御前が弘法大師を導師に迎えて開いたといわれる真言宗の寺です。古来、神の山と信仰されてきた甲山の中腹にあることから、“神のような不思議な力のある寺”として、神呪寺と名付けられたとか。また、神呪(じんしゅ)は“仏の真実の言葉”という意味を持つそうです。
平安時代に弘法大師が眞井御前の姿を写して彫ったと伝わる本尊の木造如意輪観音座像は、年に一度、5月18日にしか開帳されない秘仏です。高さ98.7cmで腕が6本、右脚を左脚にのせた珍しい姿で、首をややかしげています。「本来、観音様に男も女もないのですが、当寺のご本尊は女性的な柔和な雰囲気を漂わせています」と住職の森田瑛淳さん。
家業繁栄、商売繁盛のご利益があるとされ、別名は融通観音。「お金を融通してくれる」と商業者の信仰も厚い観音様は、平安期の傑作の一つに挙げられるほどの芸術品。大阪府河内長野市の観心寺、奈良県宇陀市の室生寺の観音像と共に日本三如意輪に数えられています。
寺が所蔵する全ての仏像を公開
5月18日の「融通観音大祭」では、本堂の木造如意輪観音座像と合わせて、大師堂の木造弘法大師座像、不動堂の木造不動明王坐像、惠光堂の木造聖観音座像も公開。残る3体も国の重要文化財に指定されており、文化的価値のある仏像を一挙に観ることができる貴重な機会です。「当日は境内の全ての堂が出入り自由。仏像は、重要文化財に指定されているもの以外もありますので、ゆっくりとご覧になってください」と森田さんは話します。
仏像鑑賞の帰りは、ぜひ隣接する兵庫県立甲山森林公園へ。9割が樹木で覆われている園内は、まさに自然の宝庫です。マイナスイオンを体いっぱいに浴びながら散策するもよし、バードウオッチングにいそしむもよし。多くの仏像と触れ合った後は、多くの植物や野鳥に出合う。そんなぜいたくな一日を過ごしてみませんか。
場所:神呪寺境内
西宮市甲山町25-1
TEL:0798-72-1172
アクセス:阪神バス「甲山大師」下車徒歩すぐ
HP:http://www.ne.jp/asahi/kabutoyama/kanno-ji/
マップ:https://maps.app.goo.gl/kCNgWumuCnnXqMWVA
西宮市甲山町43
TEL:0798-73-4600
アクセス:阪神バス「県立甲山森林公園前」下車徒歩すぐ
HP:http://www.kabutoyama-park.com/
マップ:https://maps.app.goo.gl/yYqcTVxrLbaSdqnL6