自分を見つめ心をリセットできる空間

神戸市中央区、阪急「花隈」駅から北へ坂道を上ること10分、細長いアーチ窓が並ぶレトロな白壁の建物が「café licht」です。古い喫茶店を改装し、2018（平成30）年にオープンしました。

店内には一人用のテーブル席4つと相席用の大きなテーブル席があり、椅子は一脚ずつ異なるデザイン。店主の相原祐子さんが、人々が使い込んだぬくもりが感じられるものを方々から集めてきたそうです。窓際の一人席には、季節や天候、時間帯によって少しずつ表情の異なる光が差し込み、同じ空間でありながら来るたびに違った雰囲気を楽しむことができます。「いつ訪れても静かな時間が過ごせる場所をつくりたかった」と話す相原さん。コロナ禍を機に「お一人様用カフェ」に方針を変え、月に数回設けた二人での来店とおしゃべりが可能な「特別営業」の日を除き、通常は複数人で来店しても一人ずつ別々の席に案内されます。「毎日誰かと関わることで、心は湖に波が立つようにざわつきます。一人になることで心を鎮め、リセットできる場所にしたくて」

おすすめの時間帯は、モーニングが一段落する10時以降。相原さんが月替わりでセレクトした本が置かれた席で、季節のフルーツなどを使ったケーキやスコーンなどを味わいながらゆっくりと流れる時間に身を委ねることができます。

昨年には、店の隣に「atelier licht」を開設。アートや工芸作品を展示したり食に関するワークショップを開催したりしています。「カフェでクリアになった心の湖に、新しい雫（しずく）を落としてもらえたら」と相原さん。たまには、現実から切り離されたような空間で自分とじっくり対話してみませんか。