シャガールから世界遺産までそろう「アガぺ大鶴美術館」

西宮市の北部、甲山町。アガぺ甲山病院に隣接する「アガぺ大鶴美術館」は、同病院やアガぺ甲山教会を運営するアガぺ・グループが心のオアシスとなる美術館を目指して2014(平成26)年9月に開館。昨年11月には新館として「アガぺ・シャガール美術館」もオープンしました。

芸術を通して人々に癒やしや希望を

まず目に留まるのは、その色鮮やかな外観です。外壁に敷き詰められたブルーやペパーミントグリーンのモザイクタイルが青空をバックにきらめき、期待感が高まります。「スペインの建築家、ガウディのモザイクアートをイメージしています」と話すのは、同館広報担当の佐々木一浩さん。「アートを通して、医療だけでは得られない癒やしや安らぎ、希望を感じてほしいという思いから創設した美術館ですので、外観から芸術性にこだわりました」

本館は4つのフロアから成り、1階と4階は象牙彫刻、2階は日本の美術品、3階は中国やアジアの美術品を常設展示。「全部で約500点あり、来館された方は『こんな所に、こんな珍しいものがあるなんて』と皆さん驚かれます」。2階では期間限定の特別展も実施しています。

数々の象牙彫刻の中でも注目すべきは、石渡峰月作「姫路城」。精密な造形により、世界遺産にも登録されている国宝を50分の1の大きさに再現した大作です。聖母マリア像やレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を立体化した作品など、キリスト教に関連するものも多くあります。

中国の美術品を集めたエリアには、秦の始皇帝陵から発掘された兵馬俑(へいばよう)のレプリカや、青銅製の仏像、景徳鎮の磁器などがレイアウトされ、その迫力は驚くばかりです。

モザイクタイルを敷き詰めたカラフルな外観。側壁にはアガぺ甲山教会が描かれています。
石渡峰月作「姫路城」。上質な象牙をふんだんに使用し、細部まで緻密に作られています。
清水信正作「最後の晩餐」。
秦の始皇帝陵を守る兵士や馬をかたどった陶製の像、兵馬俑と、銅車馬の精巧な複製品が展示されている一角。

色彩の魔術師シャガールの世界を堪能

本館から連絡通路で新館へ。オープンのきっかけは、3年前、芦屋市にあった私設「マイ・シャガール美術館」の収蔵品を譲り受けたことでした。「館長さんが体を壊されたため、当アガぺ・グループの代表に後を託されたのです」

新館を彩るのは、20世紀を代表する画家の一人、マルク・シャガールが制作・監修したオリジナル・リトグラフ作品。旧約聖書の世界からインスピレーションを得た全105点のエッチングシリーズ「BIBLE《聖書》」や、同じく旧約聖書の一書「出エジプト記」をモチーフにした全24点から成る「THE STORY OF EXODUS《出エジプト記の物語》」、開館に合わせて新たに購入したという油彩画「THE CONCERT《ザ・コンサート》」などが常設展示されており、シャガールの世界を堪能できます。

「“色彩の魔術師”“愛の画家”と呼ばれ、愛にあふれる幻想的な作品が多いシャガールですが、意外と聖書に関する作品も描いています」

2つの館を巡り、姫路城や兵馬俑といった世界遺産のレプリカに触れたり、シャガールの新たな一面をのぞいたり。とりどりのアートが詰まった宝箱のようなミュージアムで心豊かな時間を過ごしてみませんか。

青い壁に展示された「THE STORY OF EXODUS《出エジプト記の物語》」。1966年制作のカラーリトグラフ24点が収められた挿画本作品集の完全セット。
「THE CONCERT《ザ・コンサート》(1957年、油彩)」。新館唯一の油彩画です。
アガぺ大鶴美術館(本館)
アガぺ・シャガール美術館(新館)

西宮市甲山町53-4
TEL:0798-73-5111
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜(祝休日の場合は翌平日)
入館料:一般2,000円、65歳以上1,400円、高校・大学生700円、小・中学生500円 ※入館料は本館・新館共通チケットの代金
アクセス:阪急・阪神バス「甲山墓園前」下車徒歩すぐ ※駐車場あり(無料)
マップ:https://maps.app.goo.gl/1rnNzkKWM8oRa4rR9
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